ブランドが感じられるUIのデザイン

「ブランドが感じられるUIのデザイン」と書かれたタイトルスライド。発表者は中尾崇志(@shikakun)、日付は2026年10月3日。右下に「freee技術の日2026」のロゴ。 自己紹介のスライド。風船と紙吹雪に囲まれた鹿のイラストのアイコンと、「中尾崇志」「@shikakun」「統合UI部 デザイナー デザインシステムの開発と運用に携わっています」の文字。

こんにちは!はじめまして、freeeの統合UI部のshikakunと申します。職種としてはデザイナーなんですけれども、WebとWebの技術が好きで、フロントエンドのコードも書きながら、freeeのデザインシステムの開発と運用に携わっています。よろしくお願いします。

つばめのシンボルマークと「freee」のロゴタイプを組み合わせたfreeeのロゴ。

というところなんですけど、あの、freeeって、使ったことありますか。freeeについて、どんな印象を持っていらっしゃるでしょうか。

freeeのプロダクトのロゴ18個の一覧。つばめのロゴに、会計、人事労務、販売、経費精算、工数管理、請求書、カード、福利厚生、サイン、支出管理、IT管理、業務委託管理、申告、会社設立、アプリストア、資金調達、開業、登記のプロダクト名とアイコンが添えられている。

freeeと言いましても、freeeにはたくさんのプロダクトがありまして、ここに載せているのも一部です。会計、人事労務、販売など、扱っている業務はさまざまですが、ユーザーから見ればどれも「freee」ですし、プロダクトを使っていて起きたできごとは、すべて「freee」の印象として受け取られるのではないかと思います。

「freeeとわたし」のスライド。2024年にfreeeに入社する前は、前職でfreee会計を使って経費精算をしたり、副業で個人事業主として確定申告をしたり、青色申告のためにfreee開業で開業届を作ったりする、ひとりのユーザーでした。会計とか開業届とか、自分では仕組みがよくわからないけど、やらなきゃいけないことがある。そういうときに、伴走してくれたり、肩代わりしてくれたりする存在。それが、自分にとってのfreeeのイメージでした。思い返せば、あのころの自分がfreeeに抱いていた好意的な印象こそが、ブランドだったのではないかと思います。

すこし個人的な話になりますが、僕は2024年に入社しまして、それまでは前職でfreee会計を使って経費精算をしたり、副業で個人事業主として確定申告をしたり、青色申告をするためにfreee開業で開業届を作ったりする、ひとりのユーザーでした。

当時の自分がfreeeのことをどう思っていたかというと、会計とか開業届とか、自分では仕組みがよくわからないけど、やらなきゃいけないことがあるときに、伴走してくれたり、肩代わりしてくれたりする存在でした。そういう好意的な印象こそが、ブランドだったのではないかと思うんです。

freeeの歩みを示す年表。2013年に最初のプロダクトfreee会計をリリース(当時の細い線のつばめのロゴ)。その後freee人事労務、freee開業、freee申告をリリースし、2018年にデザインシステムvibesの開発がスタート。freeeカードUnlimitedのリリースを経て、2021年にビジョンとブランドロゴをリニューアル(現在のつばめのロゴ)。freee販売のリリース後、2024年に統合flowコンセプトを発表し、デザインプリンシプルを定義、UIの標準化の開発がスタート。その後、グループジョインによりプロダクトが増加。

ここで、freeeのブランディングの歴史を振り返ってみたいと思います。2013年に最初のプロダクトであるfreee会計をリリースしたときのロゴは、こんな感じでした。それから毎年のようにプロダクトが増えて、規模が大きくなり、成長を続けていくなかで、2018年にはvibesというデザインシステムの開発が始まり、2021年にはfreeeのビジョンにあわせてブランドロゴも変わって、つばめの形もスマートになりました。

ブラウザで表示したfreeeのブランドサイト(brand.freee.co.jp)のスクリーンショット2枚。左はつばめのシンボルの形や構成を解説する「Logo」のページ、右はPrimary ColorsとSecondary Colorsのカラーコードを一覧にした「Color」のページ。

2021年のリブランディングでは、デザインファームのTakramさんにも関わっていただいて、世界観やデザイン原則の言語化、カラーパレットをはじめとしたブランドアセットの整備が行われました。これらはbrand.freee.co.jpというURLでWebサイトとして公開されています。

GitHubで公開されているfreeeのvibesリポジトリのスクリーンショット。説明文は「フリー株式会社で使用されている、デザインシステム」で、ライセンスはApache-2.0、最新リリースはv100.1.0。

また、デザインシステムのvibesも、2年前のスナップショットではありますが、OSSとして公開していまして、ソースコードを誰でも見ることができます。

vibesのUIコンポーネントで作られた画面の例2つ。左は従業員番号、氏名、住所、生年月日などを入力するフォームと保存ボタン。右は4つのステップで進む「申請のインポート」画面で、CSVファイルをドラッグ&ドロップする領域とファイル選択ボタンがある。

いまではfreeeの多くのプロダクトで、Webフロントエンドがvibesを含む標準化されたUIコンポーネントで作られていて、プロダクトの美観や操作感を統一し、アクセシビリティを確保する仕組みになっています。

freeeの複数のプロダクトの画面6つを並べた図。会計のホーム、経費精算の申請一覧、請求書の一覧、販売の見積一覧、人事労務の従業員一覧、工数管理の工数カレンダーが、共通のサイドバーやヘッダー、テーブルなどの同じ見た目のUIで作られている。

僕は前職でもデザインシステムの開発を担当していたんですけど、その経験から見ても、こんなふうに社内のムーブメントとして、デザインシステムがここまで浸透している組織は、けっこう珍しいのではないかと思っています。

こうして、目指すブランドの姿がきちんと言語化され、その実装としてのデザインシステムも使われていて、めでたしめでたし……というわけではなく、課題も感じていました。

「ランディングページ」と「プロダクト」の比較。左のfreee会計のランディングページは、雲やつばめのイラスト、青い大きな見出しやボタンを使った華やかなデザイン。右の経費精算の作成画面は、白い背景に灰色のフォームが並ぶ簡素なデザイン。

例えば、ランディングページやバナー広告といった、プロダクトを知ってもらう接点でのコミュニケーションデザインと、プロダクトの画面とのトーンのずれ。業務アプリはどうしても質素になりがちですし、デザインシステムは必要になったコンポーネントを作り足してきたものなので、全体を見渡したときの一貫性や、目指すブランドの姿を体現できているのかというところまでは、正直手が回っていませんでした。後追いで定義されたデザインプリンシプルとの整合性も、課題のひとつでした。

「デザインシステムの成功と課題」のスライド。2018年に開発が始まったデザインシステム「vibes」は、いまではfreeeの多くのプロダクトで使われています。UIの標準化の流れも含め、社内のムーブメントとしてデザインシステムがここまで浸透している組織は、珍しいと思っています。しかし、必要になったコンポーネントを作り足してきたので、全体を見渡したときの一貫性を保つことや、目指すブランドの姿を体現することまでは、手が回っていませんでした。後追いで定義されたデザインプリンシプルとの整合性、コミュニケーションデザインとプロダクトデザインのトーンのずれといった課題もありました。経営メンバーがレビューする場で「freeeのロゴを隠せば、他社のプロダクトのように見える」と指摘されたとき、プロダクトのUIは、使いやすく統一されていればよいのではなく、ユーザーとの接点としてブランドを体現するものでもあり、情緒的な価値も求められているのだと気づかされました。

また、経営メンバーがレビューする場で「freeeのロゴを隠せば、他社のプロダクトのように見えるよね」みたいに指摘されたこともありました。これはけっこう大事な発言だったと思っていて、プロダクトのUIはシンプルで使いやすく統一感があれば十分というわけではなく、freeeのブランドイメージを体現する、ユーザーとの貴重な接点でもある。経営判断として、そういう情緒的な価値も求められているんだなと気づかされました。

UXタイムスパンの図。利用前・利用中・利用後・利用時間全体の4つの期間に、予期的UX(体験を想像する)、一時的UX(体験する)、エピソード的UX(ある体験を内省する)、累積的UX(多種多様な利用期間を回想する)が対応している。各期間から次の期間へ矢印が向かい、各期間には自身に戻る矢印もある。また、利用中・利用後・利用時間全体からは、利用前に戻る矢印が伸びている。
UX白書 日本語訳版をもとに作成

よく「ユーザー体験」と言いますが、ユーザーの体験はプロダクトの利用中だけを指しているのではなく、広告で知って、じゃあ使ってみようかなと思ったり、使ったあとに便利だったなあって思い出したりする、そういう瞬間が積み重なったものです。

記号と体験の循環を示す図。「記号(名称・ロゴ・VI)」から「体験(利用体験、広告やクチコミの認知)」へ「意味・約束」の矢印が、体験から記号へ「累積・強化」の矢印が向かっている。

そうして積み重なった体験のうち、良い体験を覚えておく手がかりになるのが、名前やロゴ、そしてビジュアルなどの記号です。記号は、次も良い体験が起こることを約束し、その約束が果たされると、記号の意味はさらに強くなります。そのような循環によって、ブランドはゆっくり築かれていくものです。

「ブランドと記号」のスライド。ブランドは、ユーザーの良い体験が積み重なって作られます。その体験を覚えておく手がかりになるのが、名前やロゴといった記号です。記号は、次も良い体験が起こることを約束し、その約束が果たされると、記号の意味はさらに強くなります。あるロゴを見て好きだと感じるのも、そのロゴの向こうに、プロダクトやサービスを利用して重ねてきた良い体験の思い出があるからです。freeeでいえば、つばめのシンボルマークや、「freee会計」「freee人事労務」といった名前がブランドの記号です。ただ、それだけでは記号が足りません。プロダクトの利用中のほかの時間でも、思い出したり、覚えておける記号を増やしたいと考えました。

知らないロゴのステッカーやノベルティをもらっても全然うれしくないように、あるロゴを見て好きだと感じるのは、そのロゴの向こうに、使うなかで重ねてきた良い体験の思い出があるからです。freeeでいえば、つばめのシンボルマークや、「freee会計」「freee人事労務」といった名前が記号なわけですが、ロゴが隠れたら別のプロダクトに見えるなんて、それだけでは足りないのではないか。

雲とつばめのイラストで縁取られた、「デザインシステムの『美観』の刷新」という章の扉のスライド。

そういった背景から、デザインシステムの「美観」を刷新することで、プロダクトの画面の中にブランドの記号を増やすプロジェクトを行うことになりました。

「デザインシステムの『美観』を刷新する流れ」と題した5つの手順。1. 完成形の全体像を作る、2. デザイントークンを設計する、3. デザインアセットを作り直す、4. UIコンポーネントを実装する、5. プロダクトへ段階的に展開する。

美観っていう呼び方が独特ですけど、デザインという言葉は広すぎるので、freeeでは表層の見た目を指すときに「美観」と呼ぶのが定着しているので、ここでも美観と呼びたいと思います。具体的にどのように進めていったのか、順を追って紹介します。

「1 完成形の全体像を作る」のスライド。まず、ブランドの記号を増やした画面とはどのようなものか、美観を刷新したあとのプロダクト画面のイメージ画像をチームで作成しました。これまでに作られてきたコンポーネントを、単体ではなく、同じリズムで項目が並ぶ一覧画面、複雑に入り組んだフォーム、要素の少ない設定画面など、freeeでよくある画面を構成しながら俯瞰し、配色や文字、余白のルールを決めていきました。テキストが中心になりがちな業務アプリだからこそ、人の名前の隣に頭文字で表現したビジュアル要素を添えて視覚的に認識しやすくしたり、タグにモチーフをあしらって楽しさを演出するといったアイディアも生まれました。この完成形をステークホルダーに提案し、刷新する方向性について合意を得ました。

まず、ブランドの記号を増やした画面とはどのようなものか、美観を刷新したあとのプロダクト画面のイメージ画像をチームで作成しました。

美観を刷新したあとのfreee会計の経費精算の画面のイメージ3つ。検索条件のフォームと申請の一覧表がある画面、カード状の項目が並ぶ一覧画面、申請時の入力項目などを設定する画面。

これまでに作られてきたコンポーネントを、単体ではなく、同じリズムで項目が並ぶ一覧画面、複雑に入り組んだフォーム、要素の少ない設定画面など、freeeでよくある画面を構成しながら俯瞰し、配色や文字、余白のルールを決めていきました。

完成形のイメージの一部を拡大した図。左は申請の一覧表で、アイコン、チェックマーク、色分けされたイニシャルの丸いアバターと承認者の名前が並ぶ。右は「経路の自動選択ルール」の表で、本部長、部長、課長、アルバイト、インターンの役職が、荷札の形をした黄色いタグで表示されている。

ブランドカラーである青を記号のひとつとして多く取り入れたうえで、テキストが中心になりがちな業務アプリだからこそ、人の名前の隣に頭文字で表現したビジュアル要素を添えて視覚的に認識しやすくしたり、タグにモチーフをあしらって楽しさを演出するといったアイディアも生まれました。このような完成形をステークホルダーに提案し、刷新する方向性について合意を得ました。

「2 デザイントークンを設計する」のスライド。カラーパレットは、ブランドで定めている色をもとに種類と段階を増やし、意味を伝えるSemantic Colorと、装飾に使えるDecoration Colorに分類。白の背景とのコントラスト比が3:1となる段階も用意し、例えばテキストフィールドの境界線がWCAG 2.1の達成基準を満たせるようになりました。画面のすべての要素について、なぜその美観なのか根拠を説明できるようにしたいと考えて、文字のサイズは16pxを基準にした調和数列から算出し、行の高さやボタンの高さ、余白を原則として4の倍数に設定し、バーティカルリズムを揃えています。こうした細部は、プロダクトの開発中にはこだわりにくいところだからこそ、デザインシステムが引き受けています。使えればいいと思われがちな業務アプリを美しく整えることは、業務を楽しくすることにつながり、それはfreeeだからこそできる社会への貢献だと信じています。

そうやって全体像を作成するなかで決まったルールを、抽象化してデザイントークンとして定義していきます。

色相環の上に、赤(H:354)、オレンジ(H:21)、黄(H:41)、黄緑(H:84)、緑(H:144)、青緑(H:180)、青(H:222)、紫(H:259)の色見本を配置した図。H:61の黄色が点線で囲まれ、「色相をずらして警告色に使う黄色を新設」と注記されている。 カラーパレットの一覧。左の「Semantic Color=意味を伝える色」にはBlue、Red、Yellow Lime、Green、右の「Decoration Color=装飾に使える色」にはOrange、Yellow、Yellow Green、Blue Green、Purpleがあり、どの色も25から1000までの段階で並んでいる。

色は、リブランディングで整備されたカラーパレットをもとに、より豊かな階調や意味を表現できるように、明度の段階を増やしたり、色相をずらして新たな色を追加したりしました。そうやって選択肢を増やしたうえで、意味を伝えるSemantic Colorと、装飾に使えるDecoration Colorに分類しました。

GrayとBlue Grayの色の段階を並べた図。Blue Grayの中央の1色が点線で囲まれ、「#FFFFFFとのコントラスト比3:1」と注記されている。Grayの同じ位置は空白になっている。 都道府県のセレクトボックスと住所のテキストフィールドの比較。「美観の変更前」は境界線が薄い灰色で見えにくい。「美観の変更後」は境界線が濃い青灰色になり、セレクトボックスの矢印も青色になっている。

白の背景とのコントラスト比が3:1になる段階も用意し、例えばテキストフィールドの境界線がWCAG 2.1のコントラスト比の達成基準を満たせるように調整しました。

デザインシステムのドキュメントサイトの「設計」ページ。見出し「調和数列とバーティカルリズム」の下に、文字のサイズを調和数列から算出する方法の説明がある。続く表では、16×8÷12=11(typography.fontSize.2xs)から16×8÷4=32(typography.fontSize.3xl)までの計算結果が、デザイントークンと対応づけられている。 文字のスタイルの一覧。defaultとboldの書体はdense、default、comfortの3つの行間、numericの書体はdenseとdefaultの2つの行間で、2xsからxlまでのサイズの見本が格子状に並んでいる。defaultとboldは例文、numericは数字で組まれている。各見本には「default/m/default 16/24」のように、文字のサイズと行の高さが記されている。

美観の刷新にあたっては、画面のすべての要素について、なぜその美観なのか、根拠を説明できるようにしたいと考えました。文字のサイズのバリエーションは、16pxを基準にした調和数列を根拠に算出し、行の高さや要素の高さ、余白は原則として4の倍数になるように設定することで、バーティカルリズムを揃えています。これにより、表やフォームのフィールドといったグリッドのレイアウトが多い業務アプリは、特に美しく整えられるのではないかと考えました。このあたりは、鈴木丈さんの記事「音楽、数学、タイポグラフィ」で詳しく解説されているプラクティスを実践させていただきました。

「申請を作成」ボタンの3つのサイズの寸法図。ボタンの高さ24、28、36pxは、それぞれ行の高さ16、18、24pxに上下の余白4、5、6pxを足した値。右側には、行の高さ16、18、24pxが、文字のサイズ12、14、18pxに上下2、2、3pxを足した値であることが示されている。

こうした細部は、プロダクトを開発するうえで、どうしてもこだわるのが難しい部分かと思います。だからこそ、その細部へのこだわりをデザインシステムが引き受けています。質素になりがちな業務アプリを美しく整えることは、結果的にユーザーの業務を楽しくすることにつながり、それはfreeeだからこそできる、社会への貢献のひとつだと信じています。

「3 デザインアセットを作り直す」のスライド。もともとfreeeのプロダクトではアイコンにMaterial Iconsを使用していましたが、美観を刷新するこの機会に、内製することにしました。会計や人事労務といったfreeeが扱う業務には、一般的なアイコンでは表しにくい概念が多いという背景もありますが、テキストが中心となる業務アプリだからこそ、画面の中の数少ないビジュアル要素であるアイコンのトーンが、プロダクトの印象を決めると考えたからです。vibesを含む標準化されたUIコンポーネントのFigmaライブラリも、新たに定義したデザイントークンに基づいて、すべて作り直しました。 内製したアイコンの一覧。銀行、カレンダー、書類、財布、人物、カートなど約100個のアイコンが、青い線と、オレンジ、黄、緑、紫、水色などのやわらかい色の塗りで描かれている。

もともとfreeeのプロダクトではアイコンにMaterial Iconsを使用していましたが、美観を刷新するこの機会に、内製することにしました。会計や人事労務といったfreeeが扱う業務には、一般的なアイコンでは表しにくい概念が多いという背景もありますが、テキストが中心となる業務アプリだからこそ、画面の中の数少ないビジュアル要素であるアイコンのトーンが、プロダクトの印象を決めると考えたからです。

Figmaで開いたデザインシステムのライブラリのスクリーンショット。左のページ一覧にはDesign Tokens(Color、Typography、Size、Elevation)や@c-fo/vibesなどがあり、キャンバスにはbadge、button、forms、breadcrumbs、dialogなどのコンポーネントが並んでいる。

Figmaのライブラリも、新たに定義したデザイントークンに基づいて、すべて作り直しました。

「4 UIコンポーネントを実装する」のスライド。freeeには多くのプロダクトがあるため、新しい美観への移行にかかるプロダクトの対応コストを、できるだけ小さくしたいと考えました。そこで、UIコンポーネントごとに従来の美観と新しい美観の両方を持たせ、アプリのルートにあるVibesProviderにbrandedオプションを指定するだけで、配下のコンポーネントがまとめて新しい美観に切り替わる仕組みを採用しました。大量のコンポーネントを実装するために、作業の手順と美観のルールをまとめ、それに沿ってClaude CodeやCodexが実装するスキルを整備しました。基本的にAIエージェントにソースコードの編集を担当してもらい、人間は判断に集中するという体制です。これにより、プロジェクトの経緯や実装の手順を完璧に把握していなくても、チームの誰もが同じ品質で速く作業を進められ、分担して取り組めるようになりました。

そうやって設計したUIコンポーネントの新しい美観を実装していくわけですが、freeeにはプロダクトがたくさんあるので、新しい美観への移行にかかるプロダクト側のコストを、できるだけ小さくしたいと考えました。

新しい美観に切り替わる仕組みの図。左のコードでは、App.tsxでアプリを<VibesProvider branded>で囲んでいる。VibesProvider.tsxはhtml要素にdata-vb-branded属性を指定し、BrandedContextで配下に伝える。Button.tsxは、useContext(BrandedContext)の値に応じてbrandedStylesとlegacyStylesを切り替える。右は入れ子の構造の図で、<html data-vb-branded>がCSSカスタムプロパティの値を差し替え、<VibesProvider branded>が配下のコンポーネントに新しい美観で表示するように伝える。その結果、<App>の中のButton、TextField、SelectBox、CheckBoxが新しい美観で表示される。

そこで、コンポーネントごとに従来の美観と新しい美観の両方を持たせておき、アプリのルートにあるVibesProviderにbrandedというオプションを指定することで、配下のコンポーネントがまとめて新しい美観に切り替わる仕組みを採用しました。

AIエージェントとの実際のやりとり。左は会話の抜粋で、エージェント「TextFieldは金額や日付など14個のコンポーネントに影響します。実装を続けますか?」、人間「OKです。お願いします。」、エージェント「Figmaに、disabledとerrorが重なった場合の美観が設計されていないようです。」、人間「disabledの指定を優先してください。」、エージェント「実装が完了し、3つのブラウザで撮影したスクリーンショットを並べました。」、人間「Storybookを確認しました。errorの場合の枠線をFigmaの設計に揃えてください。」、エージェント「修正完了しました。また、別のケースでも不具合があり、あわせて修正しました。」、人間「修正を確認しました。Pull requestを作成してください。」。右はClaude Codeの画面で、Tableコンポーネントの実装とFigmaの設計の差分を表にまとめている。

また、大量のコンポーネントを実装するために、作業の手順と美観のルールをまとめ、それに沿ってClaude CodeやCodexが実装するスキルを整備しました。基本的にAIエージェントにソースコードの編集を担当してもらい、人間は判断に集中するという体制です。これにより、プロジェクトの経緯や実装の手順を完璧に把握していなくても、チームの誰もが同じ品質で速く作業を進められ、分担して取り組めるようになりました。

「5 プロダクトへ段階的に展開する」のスライド。美観が一度に大きく変わると、日々の業務で使っているユーザーは戸惑います。プロダクト側にとっても、すべての画面をまとめて切り替えるのは大きな負担です。そこで、まずはグローバルナビゲーションやヘッダーといった、プロダクトを横断して共通する要素に絞って、段階的にリリースしています。現在は、対象を画面のコンテンツ領域へと広げているところです。全社向けの説明会を複数回開催したほか、希望するチームには個別に説明を行い、プロジェクトへの理解を得ながら、社内のたくさんのメンバーの協力のもとで展開を進めています。 freee人事労務の従業員一覧画面で、展開の段階を比べた図。「美観の変更前」に対し、「フェーズ1」では画面上部のヘッダーが、「フェーズ2」ではコンテンツ部分が赤い点線で囲まれ、新しい美観に変わっている。注記「画面は開発中のイメージです。実際のプロダクトの画面とは異なります。」

プロダクトの美観が一度に大きく変わると、日々の業務で使っているユーザーは戸惑います。プロダクトにとっても、すべての画面をまとめて切り替えるのは大きな負担です。そこで、まずはグローバルナビゲーションやヘッダーといった、プロダクトを横断して共通する要素に絞って段階的にリリースを行い、現在は画面のコンテンツ領域へと範囲を広げているところです。

社内のConfluenceのページ「2026/08/19: ブランド注入(フェーズ2)説明会 #2」のスクリーンショット。説明会の内容と録画へのリンク、参加者へのお願い、スケジュールなどのアジェンダが書かれている。

こういった取り組みを、全社向けの説明会を複数回開催したほか、希望するチームには個別にも説明を行い、社内のたくさんのメンバーに協力していただきながら進めています。

「ブランドが感じられるUI」のスライド。ブランドは、ユーザーの良い体験が積み重なって作られます。UIの美観は、その体験を思い出すための記号のひとつです。一貫した記号が良い体験を約束し、プロダクトがその約束を果たすことを繰り返すうちに、ブランドはすこしずつ築かれていきます。「ブランドが感じられるUI」とは、この約束の一端を担うUIのことです。AIが業務を肩代わりする場面が増え、ユーザーとプロダクトの接点は、画面だけでなくチャットやCLIにも広がっています。これからは、言葉づかいや機能の振る舞いも記号のひとつになるでしょう。どのような接点であっても、ユーザーの体験や情緒的価値を形づくるUIであることに、変わりはありません。

ブランドは、ユーザーの良い体験が積み重なって作られます。UIの美観は、その体験を思い出すための記号のひとつです。一貫した記号が良い体験を約束し、プロダクトがその約束を果たす。それを繰り返すうちに、ブランドはすこしずつ築かれていきます。「ブランドが感じられるUI」とは、この約束の一端を担うUIのことです。

AIが業務を肩代わりする場面が増え、ユーザーとプロダクトの接点は、画面だけでなくチャットやCLIにも広がっています。これからは、言葉づかいや機能の振る舞いも、記号のひとつになるでしょう。どのような接点であっても、ユーザーの体験や情緒的価値を形づくるUIであることに、変わりはありません。

雲とつばめのイラストで縁取られた、締めくくりのスライド。「スモールビジネスを世界の主役にするために、freeeはAIの時代だからこそ、UIと、情緒的価値に投資していきます。」

スモールビジネスを世界の主役にするために、freeeはAIの時代だからこそ、UIと、情緒的価値に投資していきます。ありがとうございました。


この記事は、freee 技術の日 2026のセッション「ブランドが感じられるUIのデザイン」の資料とスピーカーノートをもとに構成しました。